住民税部分の問題で自己負担が2,000円で済まないパターンの話
どうも、ふるさと納税係です。
所得税率の問題でふるさと納税が2,000円の負担で済まない問題は、住宅ローン控除とふるさと納税の関係と同じく、それなりに発生数がある問題ですね。
ほんと、関係の無い人は関係ないのですが、弊社監修のシミュレーションを利用した場合、おかしな数字が出るようにしてあるので、結構お問い合わせが来ます。
そして、解説が長いのでこのブログのURLを使ってお答えしている次第。
そろそろ古くなってきたので、新しく作り直そう、という今回です。
ふるさと納税は
「自己負担2,000円で、その他の部分については所得税や住民税が引かれるため、実質2,000円でお礼の品が貰える制度」
なんですよ。
基本的には
「基本的には」なので、例外があります。困った事に結構なパターン数例外があります。
その中で割とメジャーなのが今回扱う「所得税率の変動による所得税部分の軽減額低下」が原因のもの。
今回も仕組み等は別に知りたくない人向けに、ざっくり結論からいきますね。
仕組み等は別に知りたくない人向け結論
自己負担は2,000円では済まないけど、
やった方が基本的に得だから気にしなくていい
〜ここから詳しい解説〜
シミュレーションでどういう風に出るかの再現
まずは「所得税率の変動によりふるさと納税が2,000円の自己負担では済まないケース」を
確認する方法を知りましょう。
まず、ふるさとチョイス様のシミュレーションページで次のテストケースを打ち込んでみましょう。
※注 これを書いている現在では、マイページにある控除上限金額シミュレーションでは、
「自治体への合計寄付金額」を入力するところが出てきません。
ふるさとチョイス様の「控除上限金額シミュレーション」のページ
https://www.furusato-tax.jp/about/simulation
で試してください。ただ、マイページにも実装するようにお願いしてるんで、そのうち実装されるかもです。
例
年収:700万円
家族:配偶者控除あり
社保:100万円

上限金額は100,160円円と出る。

そこで結果の出た後に出現する「自治体への合計寄付金額」に10万円と入力すると、、、

本来所得税と住民税の軽減額を足したら、寄附額の10万円マイナス2,000円=98,000円と金額が出るべきなのに、
実際には軽減額が低く出る。
このケースの原因が「所得税率の変動による」なのです。
そもそも所得税率って何よ?
所得税率は、「所得」から「控除」を引いた後の「課税所得金額」をもとに、
「●●円〜●●円の間は●%の税金を取るね」と定められている割合です。
たとえば例のケースですと、課税総所得金額は334万円なので、
334万円〜330万1円の間の所得に対しては20%
330万円〜195万1円の間の所得に対しては10%
195万円以下の所得に対しては5%

と言った風に、その区間の間の稼ぎに応じて、徴収される税率が変わるように作られています。
「超過累進課税」って名前らしいです。
ふるさと納税の控除内容を見てみよう
ふるさと納税の控除の内容は以下の通り。
所得税の所得控除:(寄附額-2,000円)×(所得税率×1.021)
住民税の税額控除(本則):(寄附額 − 2,000円)×10%
住民税の税額控除(特例):(寄附額 − 2,000円)×(90% − 所得税率×1.021)
※特例分の控除上限は住民税所得割額の2割
これを組み合わせて、2,000円の自己負担で済む控除上限金額の式を組み立てているんですね。
ふるさと納税の2,000円の自己負担で済む控除上限金額の式
個人住民税所得割額×20%÷(90%−所得税率×1.021)+2千円
所得税の軽減分を反映させるために、個人住民税所得割額の20%から「割るパーセント」なんで額は増える、
つまり所得税率が高ければ高い人ほど住民税所得割額の2割より乖離して大きくなってゆく仕組みです。
さて、翻って、所得税の軽減の計算を見てみましょう。
所得税の所得控除:(寄附額-2,000円)×(所得税率×1.021)
「所得税率」って、
●●円〜●●円の間の所得に対しては●%の税金を取るね、
というルールになっています。
そして、ふるさと納税の所得税部分は「所得控除」なので、
あればあるほど所得が減ってゆくものになります。
つまり、
ふるさと納税を引く前の課税所得:334万円
が、ふるさと納税を10万円する事によって、
ふるさと納税を引く後の課税所得:324万2千円
と、累進課税のルール上の「税率が切り替わって下がる」ところにさしかかると、
334万円〜330万1円部分は20%の税の軽減
330万円〜195万1円部分は10%の税の軽減
と、2種類の%の軽減に別れてしまいます。

2,000円の自己負担で済む控除上限金額は、
その年の収入・所得・控除によって決まるのですが、
ふるさと納税を行う前の所得税率を参照して計算するので、
334万円〜330万1円部分は20%の税の軽減
だと思って所得税率を計算します。
ただ、実際に「ふるさと納税を行った後の税金の計算処理」については
330万円〜195万1円部分は10%の税の軽減
が入ってくるので、その分所得税の軽減の効率が悪くなります。
なので、その分だけ戻りの税額が少なくなる=自己負担が2,000円の負担では済まなくなるのです。
避けた方が良いのか否かと言われると
「自己負担が2,000円で済まないのだから、やらない方が良いのでは?」と思う方が居るかもしれませんが、
実はそうでもないのです。
前述のケースですと
実際の負担額 7,900円
となっていましたよね?
では10万円寄附した場合でお礼の品の価値を「全部寄附額の3割の価値のあるものが貰えた」とすると、
3万円のお礼の品が貰えてます。
お礼の品3万円マイナス実際の自己負担7,900円
=実際に得になった金額22,100円
となりますよね? 結構得してんじゃん。
ちなみに税率の境目をまたがなければ、自己負担は2,000円で済みます。
そっちも見てみましょうか。
前述のケースの課税総所得金額を見てみると
334万円
所得税率の境目までは4万円なので、この額を寄附して2,000円の負担となりますと、
同じように「全部寄附額の3割の価値のあるものが貰えた」とすると、
お礼の品12,000円マイナス自己負担2,000円
=実際に得になった金額1万円
という事で、
2,000円の自己負担では済まない
お礼の品3万円マイナス実際の自己負担7,900円
=実際に得になった金額22,100円
2,000円の自己負担で済む
お礼の品12,000円マイナス自己負担2,000円
=実際に得になった金額1万円
と比べると、実際に得になった金額は2,000円の自己負担ではない方に軍配が上がります。
なので、「仕組み等は別に知りたくない人向け結論」で最初に述べた通り、
「自己負担は2,000円では済まないけど、やった方が基本的に得だから気にしなくていい」
という事になるのです。
例外「ワンストップ特例制度」
はい、ワンストップ特例制度なんですが、
「本来所得税で引くべき金額も住民税に足されて引かれる」という仕組みでございますが、
「本来所得税で引くべき金額」については、
この所得税率の低下を加味しなくて良いというルールになっています。
なので、この所得税率が変動する場合については、ワンストップ特例を使うと回避されます。
(条文が知りたい方は「地方税法附則第7条の2」をe-Govで検索すると出てきます)
たまーに「医療費控除とこの所得税率の低下が起こる場合、ワンストップか確定申告どっちが得?」というご質問をいただくですが、よっぽど医療費控除が少なくなければ住民税分の軽減も考えるとだいたい確定申告した方がお得になりますね。
医療費控除の額×(所得税率+住民税10%)=減る税金
※実際には復興特別所得税があるのでほんのちょっとだけ減る税金は増えます
なので、シミュレーションを利用して、判定はできます。
細かい事を解説するととたんに難しくなってしますので、
まぁ「2,000円で済まないけど得だし上限付近までやって良いや」くらいの気持ちで大丈夫です。
あっ、今年のふるさと納税の控除上限金額は
今年の収入・所得・控除によって決まるのでそこだけはくれぐれもご注意を。
ふるさと納税係 天野