まぁ、所得税や住民税等の絡みでいろんな疑問は尽きませんよね。
今回は割とやっかいな問題なんで、また先に簡単な結論から言います。
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2,000円で済まないケースが色々とあります。
例えば上記のリンクにあるような
「住宅ローン控除があって、確定申告する人の一部」とか、
「寄附金控除で所得税部分の課税総所得が下がった結果最高の所得税率が下がるケース」とかです。
中でもちょっとやっかいなのが「住民税側の税額控除の計算式で齟齬が出る」ケースなのですが、
難しい事を読みたくない人向け↓
結局お礼の品の価値を考えると2,000円で済まなくてもお得になるので無視してOK
です。
住民税側の税額控除の計算の齟齬って何?
ここからは結構マニアックなお話しとなります。
まず「ふるさと納税だけに許されている、住民税をとっても引いてくれる税額控除」ってのがあります。
コイツがあるおかげで、基本ふるさと納税は上限以内の寄附なら2,000円の自己負担で済むのですが、
その計算式は、世間一般では
住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税の寄附金額 − 2,000円)×(90%−所得税率×1.021)
ふるさとチョイス様でも弊社サイトでもこう書いてありますね。
んで、上限は「個人住民税所得割額の2割」ですと。
実はですね、この赤字で塗った「所得税率」が、
実際の所得税率じゃないんです。
90%-所得税率×1.021の部分ですが、
正式名称を「特例控除割合」と言います。
ここの「特例控除割合」の求め方なんですが、
ほとんどの人は真の「所得税率」と同じなんですが、
実際には所得税率を計算するにあたって、
地方税法第37条の2第2項第1号で規定する「地方税法第35条第2項に規定する課税総所得金額から地方税法第37条第1号イに掲げる金額を控除した金額」となります。この金額は、個人住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を控除した金額となります。
となるんですよ!!
って言っても全然何の事かわかりませんよね。
(わたくしも全然分かりませんでした)
語弊を恐れず簡単に言うと
「人的控除(基礎控除とか扶養控除)」は所得税の方で見てね
ただし「生命保険料控除とか地震保険料控除」は住民税の方で見てね
という事らしいです。
所得税と住民税で、控除額が変わるものってのがいくつかあって、例えば
「基礎控除」だと所得税:38万円 住民税:33万円
といったように、控除額の変動があります。
その中でも生命保険料控除と地震保険料控除だけは「住民税側の控除」を使って、課税総所得金額を出して、その金額に応じた所得税率で計算してね、という事なのです。
例(いずれも数値は所得税ベース)
年収680万円、扶養親族なし、社保控除1,100,000円
生命保険料控除 120,000円 地震保険料控除 50,000円
この方の場合の控除上限金額は98,866円と出ます。
ただし、上記の「住民税側の問題」が出るので
9万円寄附した場合の税の軽減額=所得税9,000円、住民税70,200円=79,200円
となるので、10,800円くらいは自己負担となってしまいます。
例の「特例控除割合」の計算をしてみましょう。
所得税側の課税総所得金額=3,270,000円=最高税率は10%
特例控除を計算する際は、生保控除と地震控除は住民税側を利用するため、
所得控除の金額が
生保:12万円-7万円=5万円 地震:5万円-2.5万円=2.5万円
合計7.5万円減るので、特例控除割合を計算すべき課税総所得金額が、
3,345,000円=最高税率は20%
特例控除割合のパーセンテージのズレを計算式に当てはめてみましょう。
(ふるさと納税の寄附金額 − 2,000円)×(90%−所得税率×1.021)
(9万円-2,000円)×(90%-10%×1.021)=70215.2円
(9万円-2,000円)×(90%-20%×1.021)=61230.4円
という事で、「計算上は2,000円で済む上限を超えていない」のですが、
「税額控除の計算構造上どうしても2,000円では済まない現象」というのが起きてしまうんです。
ここで問題になってくる弊社の計算シミュレーション(お詫び)
そして弊社監修のシミュレーションに関しては、
「生命保険料控除の住民税側の控除額減衰をファジーに行っている」ため、
どうしてもこの特例控除割合の齟齬の判定が甘くなっています。
これは、計算シミュレーションを分かりやすく使っていただくための措置です。
たとえば、源泉徴収票ならば「新生命保険料の金額」とかが載っているので、それらの金額を入れてもらえればきっちり出せるんですけれど、確定申告書の第1表のみだとか、住民税の決定変更通知書だとかで計算する方も大勢いらっしゃいます。
ある程度大枠で計算できるように、あえてファジーに作っていまして、「じゃあ個別に枠作ってどっちでも対応できるようにしようよ」って言うのが本筋かもしれませんが、そうなると注釈付けても問い合わせが爆増する事が予想できてしまいます。
よってひとまずは、この方策を維持しようと思っていますが、また良い作戦が思いつけば、より正確に近づくように、より分かりやすく数値入力できるようにしてゆきたいと思います。
というか深掘りしまくると例外ばっかり出てくるんで、あんまり深く考えずに「お得な制度だな」とか思ってるのが、一番幸せかもしれません。けれども、わたくしどもはお仕事なので、そういう訳にはいきませんね……。
これからも改良できるところは頑張ってゆきたいと思っております。
ふるさと納税係 天野